日時 : 2016年3月19日 13:30-16:30
場所 : 石川県勤労者福祉文化会館
講師 : 猪熊隆之氏(株式会社ヤマテン代表)
演題 : 山岳気象の基礎と気象リスクを減らす方法
主催 : アルパインツアーズ株式会社
- 山に登る前に、天気予報を見ますか?
- 山に登る前に、天気図を見ますか?
- 天気図を見ていない
- 天気図は見ているが、天気図が表している状況を理解していない
最近は山の天気予報が出てきている。 しかしほとんどは、山頂の天気予報ではなく山麓の予報なので要注意。
山頂の天気予報を発表するには、山頂に計測装置をおいて気象庁の許可を取らなければならないが、そのような環境にある山はほとんどない。
天気予報の多くは、数値予報をそのまま条件式で変換して発表している天気予報。つまりコンピュータで自動化された天気予報。解説が書いてないものは自動化されたものが多いので注意。
山の天気は、山岳特有の地形に影響されることも多く、山の天気には当てはまらないことも多い。
天気図を見るのが一番である。
- 雲ができるかできないか
- 雲がどの高さにできるのか
- 雲がやるきを出すか
やる気を出す = 成長して上がっていくか
やる気を出さない = 成長しない薄い雲が停滞する
- 空気中の水蒸気が急激に冷やされて水滴に変わった
- さらに冷えると氷の粒に
- 雲ができる = 水蒸気が冷やされて水滴・氷粒になる
- 雲が消える = 温められて水滴・氷粒が蒸発して水蒸気になる
空気が上昇する
→ 空気が冷やされる
→ 雲が出来る
空気が上昇する場所
→ 上昇気流が起きる場所
→ 雲が出来る場所
- 山の斜面 ←これが山特有の気象変化
- 低気圧や台風の中心
- 前線
- 風と風がぶつかり合うところ (風→↑↑←風)
- 地面が暖められたところ
空気が下りてくる場所
→ 雲ができない
→ 高気圧の中心付近
- 水分を含んだ空気が風によって山にぶつかる
- 斜面に沿って山をのぼっていく
- 空気が冷やされる
- 水蒸気が水滴・氷粒になって雲ができる
- 風上側で天気が崩れて、風下側は天気がよい
- 山を境目にして天気が大きく異なる
- 日本海側と太平洋で分かれる冬の天気が特徴的
水蒸気の量 = 相当温位(そうとうおんい)
- あたたく湿った空気
- 冷たく乾いた空気
- その中間
あまり情報として一般に公開されてないので、水蒸気が多いところと少ないところを覚えておく
水蒸気が多いところ = 海の上(特に水温が高い海 例.冬の日本海)
海側から風が吹いてくる → 稜線の風上側の山で天気が崩れる
広域の地図で、風向きと海と自分の位置関係を見る
- 風上の海と自分の登る山の間にもっと高い山があるか
- その山は連なっている山か
- 風の強さ
- 風の向き
- 風は空気の流れ
- 高いところから低いところへ流れる → 水と一緒
(水は位置、風は気圧)
風速 +1m/s = 体感温度 -1度
- 15m/s以上になると危険
- 20m/sを超えると、何かに捕まらないと移動が困難
- 25m/sを超えると、這ってしか移動できない
- 30m/sを超えると、這っても移動できない
空気は地球の重力によって地面に押しつけられている
地面に近い所ほど押しつけられる力が強く、高いところは弱い
- 標高が低い → 空気が詰まっている
- 標高が高い → 空気が薄い = 酸素濃度が低くなる
同じ標高の場所でみると、気圧は地面の環境(=温度)によって異なる
- 芝生の上
- アスファルトの上
- 森の上
- 川の上
※例えば住環境で風を作るには、気圧の差を作ればよい
- 高気圧 = 山
- 低気圧 = 谷
- 中心の数字は山(谷)の標高と同じ
山の等高線 = 天気図の等圧線
- 間隔 約500km
- 東京大阪間
- 間隔 300km以内
- 東京名古屋 → 平均15m位の風になる可能性
- 間隔 100km以内
- 東京熱海 → 大荒れ
一般的に見ている天気図は海抜0mのもの
2,500mを超える山だと、普段見ている天気図では風の様子が異なることもある → 高層天気図
- 850hPa (高度約1,500m) → 低山の気象状況
- 700hPa (高度約3,000m) → 2500m以上の山の気象状況
- 500hPa (高度約5,500m) → 冬季の大雪、夏季の雷の予想に重要な指標
標高が高いところの風の目安になる雲(強風 → 天候悪化)
- レンズ雲
- 笠雲
風は気圧の高いところから低いところへ
- 地球の自転の影響で(北半球では)直角右に向きを変えられる
(風の向きは変わってないのに、自分が移動しているから)
標高の高いところでは、気圧が高い方を右手に見て、等圧線に平行に風が吹く
- 本当は : 低気圧 | ← | 高気圧 ← 気圧が高いところから低いところへ
- 実際は : 低気圧 | ↑ | 高気圧 ← 90度右に曲げられて
- 南東の風が吹く
- 太平洋側で天気が崩れる
- 北西の風が吹く
- 日本海側で天気が崩れる
※低体温症の事故が起きるのはほとんどこのパターン
- 海水温の差が少ない
- 平地では天気が回復
- しかし山では上昇気流で天気が崩れる
※平地の天気では分からない
森林限界が高い
森林限界が低い → 行動中に風の影響を受けやすい
※森林限界より上で歩く距離が長い = 風が強くなったときのリスクが高い
稜線に風からの逃げ場が少ない ※白山・月山
風からの逃げ場が多い
- あまり急激に天候が悪化しない
- 低気圧が通り過ぎた後、短時間の間に急激に天候が悪化しやすい
- 低気圧が通過した後、一時的に天候が回復して行動してしまうことがある
- 天気になった時に、その後の天気を判断する
- 高圧線が混み合った場所が西に残っている場合は、そのまま晴れることはない
- 1000m上がるごとに0.6度気温が下がる
- 高い山は直射日光が強い
- 風がなければ暑い
- 風が吹くと急に寒くなる
- ザックの中に防寒着があるのにそのまま低体温症になるケースが多い
- 嵐の中で着替えるのは困難
- 風が強くなる前に防寒着を着用すること
- これから森林限界を超える時など
- 天候が悪化したした場合は外に着ることも考える
- 吹雪の時(特に乾いた雪)は濡れに弱いダウンでも結構もつ
- 風が強くなる前に防寒着を着用すること
積乱雲(入道雲)が原因
- 暖気 暖かい = 軽い(密度が小さい)
- 寒気 冷たい = 重い(密度が大きい)
※水と同じ
[暖かい空気] ↑軽い
[冷たい空気] ↓重い
[ 地 面 ]
例. 雲海が出来る状態 = 安定した状態
冷たい空気と暖かい空気の層がはっきりしている
↓上層に寒気が流入↓
[冷たい空気] ↓重い
[暖かい空気] ↑軽い
[ 地 面 ]
↑熱で温められる↑
大気が不安定だと雲が発達する
大気の不安定度を見る
大気が不安定な状態 = 上層と下層の温度差が大きい状態
大気が不安定なほど、雲が高く発達する
冬の日本海側で積乱雲が発達するのはなぜ?
[冷たい空気] ↓重い シベリアからの冷たい風
[暖かい空気] ↑軽い 暖かい日本海(海水温が15度とか)
[ 地 面 ]
上下の温度差が大きくなりすぎて大気が不安定な状態になる
- 大気が不安定
- 上空に寒気を伴った低気圧が接近
- 太平洋高気圧の勢力が後退
これらの言葉が出てきた時は要注意!
- 氷の粒がある
- 気流が乱れている
- ぶつかり合って摩擦を起こし電気が起きる
12月〜3月 + 500hPa面気温 -36℃以下
12〜3月 + 500hPa面気温 -30℃以下
- GW + 500hPa面気温 -24℃以下
- 9月下旬〜10月上旬 + 500hPa面気温 -15〜-18℃以下
- 梅雨期 + 500hPa面気温 -9〜-12℃以下
夏期 + 500hPa面気温 -6℃以下
夏に山の山腹で雲ができはじめるのは普通
- 早朝など早い時間から雲が出来る
- いきなり山頂や稜線付近に雲ができる
といった時は要注意
- 雲が黒い = 雲が厚い
- 日本海側で、日本海側からもくもくした雲が帯状にできて迫ってくる → 危険!
-
雷はどこにでも落ちる!
-
雷は材質が金属でも木製でも落ちる
-
雷は突起状のもの、高いものに落ちる傾向がある → 山頂より鞍部に逃げる
鞍部に逃げるのは風の時とは逆 -
避難小屋など屋内の場合は部屋の中央に
- まずは近くの低いところへ逃げる
- ピッケルストックなどの突起物を下に置く
- 窪地の中に転がり込む
- 稜線など高いところから、より低い所へ
- 高い木の枝や葉先から4m以上離れる
※5m未満の物体、木は保護範囲がない - ただし、30m以上の物体では30m以内へ
森の中にいる時は...
- 中でも特に高い木から離れる
- 木のまばらなところへ移動する
集団で歩いているときは、他の人から4m以上離れる
→ みんなで被雷しない
- 低い姿勢をとる
- 両足を閉じて、できるだけ身を小さくかがみ込んだ姿勢を取る
× 両足を開く → 足から入って足に出て行く電気の流れを作ってしまう
× 寝そべる → 頭と足の間を通る電気の流れを作ってしまう - 両耳をふさぐ(雷鳴によって鼓膜が破れないように)
初夏、初秋に多い気象遭難
- 強風(暴風) → 特に平均風速15m以上
- 濡れ(降雨、降雪)
- 低温 → 特に気温が急激に下がるとき
パターンはいつも同じ
- 低気圧や台風が日本の東や北へ進む
- 目的の山の付近で等圧線が混み合う
(目安としては日本列島で5本以上、線の間隔が300kmより狭い) - 北アルプスの場合、等圧線が寝ている方が恐い
| よりも \ が恐い → 風向き