下記のページに掲載されていた意見書を個人的な観点で要約してみました。
【意見書全文】首相は「朕は国家」のルイ14世を彷彿:朝日新聞デジタル
自動翻訳で作成した英語版もあります。/ English version is here:
Summary: Volunteer former prosecutors' opinion on the extension of the retirement age of the Chief Prosecutor of Tokyo High Prosecutors
- 検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており、定年延長を可能とする規定はない
- 東京高検検事長 黒川弘務氏は2020年2月8日で63歳になるので、検察庁法に則って退官する予定だった
- しかし2020年1月31日に「黒川氏の定年を8月7日まで延長する」という閣議決定が行われた
- 黒川氏は定年を過ぎたにもかかわらず、今なお現職にとどまっている
- 定年は検察庁法で定められているので、法改正の手続きが必要だ。しかし閣議決定だけで定年延長を決定した
- 内閣が黒川氏の定年延長を決定したのは、8月初旬に黒川氏を検事総長に充てるためだと憶測されている
- 国家公務員法では一定の要件下で定年延長が認められている
- 内閣は「検察官も国家公務員だから国家公務員法が適用可能だ」という理由で、黒川氏の定年延長を閣議決定した
- しかし、検察官には検察庁法がある。国家公務員法と検察庁法は一般法と特別法の関係にある
- 「特別法は一般法に優先する」という法理がある
- 検察庁法に63歳定年の規定があるのだから、検察官の定年については国家公務員法(一般法)は適用されない(つまり特別法である検察庁法が優先して適用される)
- このことは1981年に当時の人事院事務総局任用局長がその旨明言している
- よって、検察官に国家公務員法が適用されるという内閣の解釈は成り立たない
- 安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」という旨の発言をした
- これは法律改正(=国会の権限)の手続きを経ず、内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言である
- この姿勢はルイ14世の「朕は国家である」という言葉を彷彿とさせる
- この姿勢は三権分立の否定にもつながりかねない
- 仮に国家公務員法を適用するにしても、その規則に従うのなら「黒川氏でなければ対応できないほどの事案」が必要となる
- ゴーン被告逃亡事件にしても、黒川氏の後任の検事長では解決できない何か特別な理由があるのか
- わざわざ役職定年を延長してまで黒川氏を検事長に留任させるほどの理由(法律上の要件に合致する理由)は見当たらない
- 2020年4月16日に検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が審議入りした
- この改正案は、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で提出されている
- また、野党が求めた黒川氏の定年延長の閣議決定撤回は行われず、この問題の決着が着かないまま、審議が開始されている
- 検察庁法改正案では「内閣が必要と認める一定の理由があれば、次長検事および検事長は63歳の定年に達していても1年以内の範囲で定年延長ができる」という旨の条文がある
- この規定は黒川氏の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである
- これまで検察官の人事に政治は介入しないという慣例が守られてきた
- この検察庁法改正案は検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる
- 1976年のロッキード事件では、検察が数々の難局を乗り越えて田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至った
- 検察の歴史には恥ずべき事件もあったが、だからといって検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、公訴権の行使にまで干渉されるようになったら、検察は国民の信託に応えられない
- 正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない
- 内閣が検察庁法改正案の定年延長規定を撤回しないのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこれに反対し、阻止する行動に出ることを期待してやまない