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「スクラムマスターがいることでどんな利益があるの?」と言われた時点で専任のスクラムマスターは不要なのかもしれない。でもその先の話がしたい。

はじめに

「スクラムマスターがいることでどんな利益があるの?」

スクラムマスターをやっていると時々この質問を受けることがあります。

スクラムを始めたばかりのチームや組織はもちろん、広報BLOGに「専任のスクラムマスターをおくことにこだわってます。」とCTOが書いているような企業の中にいても こうした問いかけを受ける事があります。

この記事では私が実際にこの問いかけを受けてから、ずーと考えていたことを、なるべく整理してまとめています。それでも雑な文章になっていること、そして個人的な見解でしかない事はご承知おき頂けますと幸いです。

この記事の概要

この記事をまとめるこんな感じです!

  • 「スクラムマスターがいる事でどんな利益になる?」と言われたら信頼されていない可能性が高い
  • その時点でスクラムマスターが必要がないということを意味しているかもしれない
  • 信頼を得ていないのはスクラムマスターというポジションなのか、それともそもそものアジャイル開発についてなのかを見極める必要がある
  • あなたにとって大事なことはスクラムマスターであること or プロダクトの成長に貢献すること?
  • スクラムマスターが必要ないのなら必要になれば良い
  • 組織の状態を変えたいのであれば仲間が必要
  • 仲間を作るには信頼を得る必要がある
  • 組織やチームの課題を見つけよう
  • そして引き受けよう

「スクラムマスターがいることでどんな利益があるの?」この問いかけに答えるには、スクラムの話の前にアジャイルの必要性を考える必要がある

「スクラムマスターがいることでどんな利益がなるの?」という質問に答えるには、組織にとってそもそもアジャイルが必要なのかを、考える必要があると私は思います。

アジャイルは特効薬ではなくトレーニング

アジャイルは筋トレや生活習慣の改善のようなもので、「飲むだけで直ぐに痩せれる」とか、「飲むだけで筋肉がついてマッチョになれる」とかという特効薬ではありません。

パーソナルトレーナーに需要があるように筋トレは続けるのは難しい。

アジャイルも同じで結果が出るまで継続するのが本当に難しい。

筋トレはひとりでやる人もいる、だけどソフトウェア開発は一人では出来ない

もちろん筋トレ同様に、自力でアジャイルの理解を深めていく人もいるかもしれません。

だけど、ソフトウェア開発は一人では出来ない。チームでやっていくものです。個人ではなく、チームとなると人が増えます。人が増えると必然的にコミュニケーションコストも増えていきます。そうすると継続していく難易度はかなり高いものになっていきます。

その難易度の高い状況下においても、アジャイルをすすめるためにチームを支援するトレーナーにあたる職業があります。アジャイルコーチという職業です。そしてスクラムを採用する場合はこのアジャイルコーチがスクラムマスターの役割を担う事が多くあります。

※規模感によりますがスクラムマスターはアジャヤイルコーチの役割の一つだと私は思っています。

アジャイルは設備ではなく体系や組織(システム)改善するための投資

別の例えで言えば工場の設備の話があります。

それまで人がやっていたことを完全に産業用ロボットや専用機に置き換えたりすることで、課題となっていた人手不足や経費削減の問題を解決することはよくある話です。

しかし設備に置き換える事で解決しない問題もあります。

それは工場内で働く人達の連携強化であったり、安全意識の向上であったり、日々の節電、ごみの分別などの意識の改革….などなど設備ではなく、体系や組織の改善が必要なものがあります。

こうした改善のための活動には即効性ありません。この改善活動には長期的な成果を見越した投資が必要です。それはお金や人材だけではなく時間も必要になります。

アジャイルも設備ではなくこの体系や組織の改善のための投資にあたります。 そのため即効性はないが長期的に効果を出すためのものであると考える必要があります。

「効果が約束出来ないものに大きなお金はらえない」が現実

「効果が約束出来ないものに大きなお金はらえない」

設備ではなく投資の話をするとこうしたリアクションを受ける事はしばしばあります。

お金を出す側の気持ちとしてはいつ効果が出るのかは非常に関心が高いところ。

ですのでこれはやむを得ません。

なぜなら、お金が無くなれば組織自体が成り立たなくなるわけですから。

だから小さくはじめる、早くつくる、早く失敗する、早く改善する これしかない

アジャイルは確実な効果を保証するものではありません。 いつまでに何かを必ず達成を確約するための手法ではありません。

だから小さくはじめて、早く動くものを作り、早く失敗し、早く改善する

まずは小さい規模感で効果を図る

そこで継続するかの判断をする

上手くいけば続ければ良いし、効果が出ずその先も信用できなければ撤退すればいい

損はするかもしれないが、大きな痛手にならずに済むのでリスクは少ない

これが本来のアジャイル開発のメリットだと私は考えています。

スクラムとはアジャイル開発を成功させるための最小の枠組み(フレームワーク)である

ここでようやくスクラムの話になります。

私はスクラムとは何かと問われたらこのように答えます。

「不確実性(ふかくじつせい)の多い課題に機敏(きびん)に対応するための、アジャイル開発の枠組み(フレームワーク)の一つだと認識しております。アジャイル開発は小さく開発し、早くデプロイし、早く失敗し、早く改善する これを繰り返すことで製品の理想的な形に早く近づくための開発手法ですが、スクラムはそれを実現するための最小構成の枠組みだと考えています。」

もう少しかみ砕くと

「アジャイルという開発手法があり、そのフレームワークはいくつかありますが、スクラムはその一つにうなり、おそらく最も有名なもののひとつです。」

となります。

フレームワークとはルールなどが定められた枠組みのことで、開発関連では言えばRubyのRuby on Raills、ReactのNEXT.jsだったりします。組織開発だとOKRやタックマンモデルをイメージすると良いかもしれません。

ちなみにアジャイルのスクラム以外のフレームワークは有名なところではXPや少し違うかもしれませんがカンバン方式などがあります。

スクラムマスターはスクラムのトレーナー

そしてようやくスクラムマスターの話になりますが、スクラムマスターはアジャイル開発を行う時に、フレームワークとしてスクラムを採用した場合のスクラムの推進役になります。

つまり、スクラムに価値があるという前提でスクラムマスターを専任で設けられているのがあるべき姿だと考えます。

それゆえに「スクラムマスターがいることでどんな利益がなるの?」と言われている時点でその組織に専任のスクラムマスターは不要なのかもしれないという悲しい仮説が生まれてしまいます。

もし「スクラムマスターがいることでどんな利益があるの?」と聞かれたら、それはたぶん、いや確実に信頼を得ていないと疑った方が良い

話を最初に戻します。

ここまでの話で

「スクラムマスターがいる事でどんな利益がなる?」の答えは

「スクラムマスターはスクラムを上手く進めるために存在します。成果はすぐにはでませんが長期的に利益を出すことが出来ると思います。」

と答えられるかもしれません。

しかし、「スクラムマスターがいる事でどんな利益になる?」と聞かれたら間違いなくスクラムマスターというポジションは信頼を得ていないと私は思っています。

その状態で上記のように回答をするとどうなるでしょうか?

わたしは、ますます不信感を得る事になると思います。

「答えるまえにお聞きしたいです。あなたはアジャイル開発についてはどう思っていますか?」と質問してみる

まずは不信感の正体は何かを知る必要があるのでこう質問をしてみましょう。

※質問に質問で返すことへの謝罪は忘れずに

この質問の意図は?

この不信感は単にスクラムマスターというポジションになのか、そもそもアジャイルになのかを詳細に確認する必要があります。

「その前にアジャイルについてはどう思っていますか?」と質問してみる理由はそれを確認するためです。

「アジャイルの必要性は理解した。でもスクラムマスターというポジションが必要なのかが分からない」の場合

信頼を得ていないのがスクラムマスターだと分かりました。

これは組織のフェーズによるかもしれませんが、単純にスクラムのサイクルが回るように定着させるだけであれば、スクラムの知見のあるチームメンバーが役割として担うことで事足りるのもしれません。

最近ではエンジアリングマネージャーが業務の一つとしてその役割(スクラムマスター)を担っているケースも見かけます。

そうすると専任のスクラムマスターはたしかに必要ないかもしれません。

スクラムマスターを専任で置くべきかの検討が必要

スクラムマスターはスクラムのサイクルを定着させるだけでなく、その先にある自立型組織の運用と改善、それを常に考えて手を打っていくスペシャリストでありとても重要な役割だと私は思います。

しかし、組織が「まだそこにコストを払うときではない」と考えるのであれば、専任のスクラムマスターは置くべきではないのかもしれません。

このあたりはログラスさんのこの記事が非常に参考になりました。

「私たちにアジャイルが本当に必要なのか分からない」の場合

アジャイルについての疑問・不安・不信感があることが分かりました。

この場合は、「そもそもなぜこの組織ではアジャイルを選択することになったのか」を、考える必要があります。

「もしかしたらウォーターフォールの方が有効ではないのか?」そこに立ち戻る必要があるかもしれません。

「アジャイル開発だと安くできますよ」という詐欺にあっていたのかもしれません。 上記で述べたようなアジャイルの説明(筋トレのたとえ話など)をした上で、あらためてアジャイルを採用すべきかを協議する必要があります。

あなたにとって今大事なことはなんですか?

「スクラムマスターがいる事でどんな利益になる?」と聞かれたら、確実に信頼を得ていないと考えて間違いないと思います。

そして、この信頼を得るには、かなりの根気と忍耐が必要になるため相当の覚悟が必要となります。

あなたにとって今大事なことはスクラムマスターをする事ですか?それともプロダクトの成長に貢献することですか?

この先に進む前にこの質問の答えを考えてみてください。

回答の先にそれぞれに進むべき道が見えてくると思います。

スクラムマスターをすること と答えた場合

もしあなたが関わるプロダクトを成功させ、それを使う誰かの役に立つことに価値を感じれないのであれば、環境を変える(異動や転職など)をすることをお勧めします。

それはあなたにとってスクラムマスターをする事がそのプロダクトへの貢献よりも強いためです。

でもそれは決して悪い事ではありません。

スクラムのすばらしさを知り、スクラムマスターとして経験を積みたいと思う事は大事なことです。ただその場合は今の環境は適していない可能性があります。

スクラムマスターの必要性を組織として理解し進めている段階の会社を探しましょう。この道はなかなかと険しい道になりますが、その覚悟で進めばきっといい組織に巡り合えるはずです。

プロダクトの成長に貢献すること と答えた場合

もしあなたが現在関わるプロダクトに愛着があり、その成功・成長とそれを使う人に役立つことに価値を見出せるのであれば、覚悟を持って信頼を勝ち取るところからはじめてみましょう。

信頼を得ることであなたは働きやすくなり、あなたはよりプロダクトに貢献できるようになるはずです。

ポジションはスクラムマスターであるかもしれなし、そうではないかもしれない。

でも、プロダクトに愛着があるあなたにはポジションに拘りはないはずです。

スクラムマスターが不要なら必要になればいい

信頼を得ていないのがスクラムマスターというポジションになのか、そもそもアジャイルになのか程度感はありますが、どちらにしても専任のスクラムマスターというポジションが必要とされていないのは間違いありません。後者の場合、かなり上流でこじれているので解決するのは厄介です。

失礼ながらこの記事を読んでいる人の力では解決することは不可能でしょう。(出来る人なら申し訳ありませんmm)

この状況を良くするために仲間が必要です。

あなたに「スクラムマスターがいる事でどんな利益があるの?」と聞いたその人も仲間にする必要があるかもしれません。

信頼を得るところからはじめよう

まず出来るところからはじめ信頼を勝ち取りましょう。

「スクラムマスターは不要なのかもしれない」と言われても、その専任でポジションに就いている身としては「はい、そうですか」とはいきません。

不要であるならば、必要な存在になるしかありません。

そのためには信頼を得るしかありません。

「これはスクラムマスターの仕事?」ではなく、「組織やチームに貢献すること」からはじめてみる

スクラムマスターは観察が得意なはずです。 組織やチームをよく観察すれば、抱えている課題は見てくるはずです。 観察の結果を分析し組織やチームに貢献できることはなんでもやりましょう。

それは、関係各所の調整作業かもしれません。

それは、メンバーの苦手な事務作業かもしれません。

それは、POの苦手な報告書の作成かもしれません。

それは、ちょっとしたデバグ作業だったりするかもしれません。

もしくは簡単だが誰もやりたくない地味な作業かもしれません。

中には自立型のチームを目指すならチームがやるべき仕事かもしれません。

それでもあなたが出来ることであれば、引き受けてみましょう。

信頼を勝ち取るには出来るところからはじめるしかありません。

おわりに

私は「スクラムマスターがいることでどんな利益があるの?」と言われた時に覚えた違和感を抱えながらこの一年ほど過ごしてきました。

最初はこの時点でその組織に専任のスクラムマスターは不要なのかもしれない。と考えました。しかし、結局は組織やチームそしてそれらが作り出す製品とそれを使う人々の価値につながる仕事がしたい!そのと思いが発端で私はスクラムマスターをやっていると気が付きました。

冒頭に書きました通り、これはあくまで私の個人的な考えです。

まとめたと書きましたが最後まで書いてなんども書き直してもやっぱりちゃんとまとまってません。

ただの垂れ流しと言われても文句は言えない代物でです。

それでもこの記事が誰かの役に立てば、何かの参考になっていただければ嬉しい限りです。

それでは

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